「秋の日はつるべ落とし」
つるべ落としというのは、釣瓶を井戸の中へ落とすときのように、まっすぐストンと落ちるということ。
言うまでもないでしょうが、「秋の日はつるべ落とし」とは、秋の日はたちまち暮れてしまうということです。
このように、あっという間に暮れてしまう秋の夕暮れですが、古人(昔の人)はどう感じたのでしょうか?
三夕(さんせき)の和歌を見てみましょう。
★ 寂蓮法師の歌
寂しさは その色としも なかりけり まき立つ山の 秋の夕暮れ
(さびしさはその色のせいでもないのだなあ、常緑樹がそそり立つ秋の夕暮れ。)
★ 西行法師の歌
心なき 身にもあはれは 知られけり しぎ立つ沢の 秋の夕暮れ
(世を捨てて出家した我が身にも、しみじみとした情趣は感じとれることだ、鴫(しぎ)の飛び立つ沢の秋の夕暮れ。)
★ 藤原定家の歌
見渡せば 花も紅葉も なかりけり 浦の苫屋(とまや)の 秋の夕暮れ
(見渡すと花も紅葉もないことだ、浜辺の漁師小屋のわびしい秋の夕暮れ。)
常緑樹の青々とした木の色を見ても、心情を捨てた出家の身となっても、花も紅葉もない風景でも、秋の夕暮れというものはしみじみとした侘(わび)しさ寂(さび)しさがこみ上げてくるようです。
日本の美意識の一つ
日本の美意識の一つ、侘(わび)・寂(さび)も、秋の夕暮れの情趣を感じ取れる者にこそ理解できるものなのかもしれません。侘(わび)・寂(さび)で鍛えられた日本人の超越した我慢強さや忍耐力、日本人の価値観は美である。武士道の本質こそ美。真善美の価値基準の中で美に重き置ます。
さて、過ごしやすい日々が続いていますが、 これから秋に向かって急激な気温の変化に体がついていけず体調を崩す人も多いのではないでしょうか。
この季節は夏の疲れから、特に冷たい秋風にさ らされると、抵抗力や免疫力の低下によってカゼをひきやすくなることから、体調管理にいっそうの注意が必要です。心も身体も万全を期して実りの秋に備えましょう!