青葉が目に沁む初夏、あちらこちらで白い花が咲き、夏の先駆けに夏の到来を告げてくれる清々しい歌。童謡・唱歌「夏は来ぬ」。歌詞の作詞者である国文学者の佐佐木信綱は三重県鈴鹿市石薬師町の出身です。
卯の花の匂う垣根に 時鳥(ほととぎす)早も来鳴きて 忍音もらす夏は来ぬ
新元号「令和」の典拠が万葉集ということで、世間は万葉集ブームですので、古典・和歌への関心が高まっている今こそ、「夏は来ぬ」の歌詞の意味をひもとき、作詞者への思いに迫ってみることで、夏の到来を楽しんでみるのも良いでしょう。
明治5年(1872)に鈴鹿郡石薬師村にて歌人佐々木弘綱の長男として生まれ、5 歳の頃より父より古歌や書の教えを受けて育った信綱は19歳で父と「日本歌学全集 」を刊行し、その後も和歌の実作と研究を通して関連する書物を多く出版しました。
明治29年(1896)25歳の時に新編教育唱歌集にこの「夏は来ぬ」を発表。大正14年(19259に「校本万葉集」を刊行し、万葉学史にも業績を残した。その数々の業績が認められ昭和12年(1937)には、文化勲章を受章。また、生まれ 故郷への思い入れも深く、昭和7年(1932)に石薬師文庫を寄贈し、郷土の文化 発展にも心を注ぎました。
明治、大正、昭和の三代に渡り歌壇で、また国文学者として活躍し92歳の生涯を閉じ信綱。彼の業績を称える「佐佐木信綱記念館」には信綱の幼少期の書をはじめ、自筆の短冊や掛軸、著作物、遺品物が多く展示されています。みなさんも一度訪ねてみてはいかがでしょうか。
※ さて、最後に次の漢字を読めるでしょうか?
時鳥、 子規、 不如帰、 杜宇、 蜀魂、 田鵑、 杜鵑
これはすべてホトトギスと読むから暗記しろ!と、高校での古典の授業。
正岡子規,高濱虚子らによって創刊された新時代の俳句誌は「ホトトギス」だから覚えなさいと。また正岡子規は結核で吐血したため、自分を「鳴いて血を吐くホトトギス」になぞらえて「子規」と号したとも習ったことを思い出しました。古人たちは、あのけたたましいホトトギスの鳴き声にいろいろな想いを重ねていたのですね。
「てっぺんかけたかー!」 〔笑〕